医療脱毛とサロン脱毛の違い(法律上の違いを含む)
医療脱毛とサロン脱毛の違いは、行える施術の範囲が法律で分かれている点にあります。毛乳頭や毛包幹細胞を破壊する脱毛は医師法上の医行為に当たり、医療機関でしか行えません。この記事では、その線引きの根拠と、施術方法・トラブル件数の違いを公的な資料から整理します。
法律上の違い:医師法17条と厚生労働省の通知
医師法第17条は、医師でない者が医業を行うことを禁じています。厚生労働省の通知(医政発第0726005号)は、医業に含まれる「医行為」を次のように説明しています。医師の医学的判断と技術がなければ人体に危害を及ぼす、または及ぼすおそれがある行為を、反復継続する意思で行うことです。
さらに、厚生労働省の通知(医政医発第105号、平成13年11月8日)があります。この通知は、レーザー光線やその他の強力なエネルギーの光線を毛根部分に照射して毛乳頭・皮脂腺開口部等を破壊する行為を医行為に該当するとしています。用いる機器が医療用かどうかは問いません。この行為を医師免許のない者が業として行えば、医師法第17条違反になるとされています。
国民生活センターの資料は、この線引きを次のように整理しています。エステで行えるのは、光を照射することなどによる一時的な除毛・減毛など、医行為に該当しない範囲の施術のみです。高い脱毛効果を得るために必要な毛包幹細胞の熱変性(破壊)は、医療機関でしか行えません。
同じ資料は、針を使う脱毛についても触れています。毛穴へ針を挿入して電気を通し、毛乳頭部を破壊する方法による脱毛行為も、古い通知(昭和59年11月13日付医事第69号)の時点で医行為に該当するとされてきました。レーザー脱毛・電気脱毛のいずれも、毛乳頭や毛包幹細胞そのものを壊す施術は医療機関の範囲という整理です。
施術方法の違い
美容医療診療指針によると、医療機関で使われる脱毛用レーザーには、アレキサンドライトレーザー・ダイオードレーザー・Nd:YAGレーザーなどがあり、厚生労働省が脱毛器として認可した機種が使われます。レーザー光は毛のメラニンに吸収されて熱を持ち、毛包全体に熱を伝えて毛乳頭などを破壊する仕組みです。
一方、エステで一般的な光脱毛(IPL)は、複数の波長を含む光を使う方法です。同指針は、エステや家庭用の美容機器として販売されている製品のほとんどがこのIPLであると説明しています。IPLは単一の波長ではないため、メラニンへの選択性は脱毛用レーザーより劣り、脱毛の効率もやや劣るとされています。
美容医療診療指針は、医療レーザー脱毛について起こり得る一般的な合併症として、毛のう炎・熱傷(水ぶくれやかさぶた)・炎症後色素沈着・色素脱失・瘢痕などが報告されているとしています。医行為として医師の管理下で行われる一方、皮膚組織を熱で変化させる施術である以上、一定の合併症が起こり得ることが学会の資料にも記載されています。
トラブル件数からみる違い
少し古い資料ですが、国民生活センターが2017年5月に公表した資料によると、2012年度以降の約5年間(2017年2月末までの登録分)で、脱毛施術による危害の相談が964件寄せられました。内訳はエステで受けた脱毛が680件、医療機関で受けた脱毛が284件です。施術内容別では、エステは光脱毛が最も多く229件、次いでレーザー脱毛72件、電気脱毛31件でした。医療機関はレーザー脱毛が206件で全体の96.3%を占めていました。
危害の内容は、エステ・医療機関とも「皮膚障害」「熱傷」が多く、皮膚障害の具体的な内容は痛み・腫れ・炎症・発疹等でした。危害の相談のうち、相談者が医療機関で治療を受けていた事例の割合は、エステが57.3%、医療機関が67.0%でした。危害の程度が分かる相談のうち、治療に「1カ月以上」かかったものは、エステで17.6%、医療機関で23.6%でした。医療機関で脱毛を受けて治療を受けた事例のうち、脱毛を受けた医療機関とは別の医療機関を受診した人は45.9%にのぼりました。
国民生活センターは、医療機関で行われる脱毛について次のように説明しています。人体の組織を破壊する行為であるため、やけどや腫れ、赤みなどの皮膚トラブルが起きる可能性があるとしています。一方で、トラブルが起きた際も直ちに医師の診察を受けられる点を挙げています。エステでトラブルが起きた場合は、施術を行ったスタッフに医師の資格がないため、症状が出たときは別に皮膚科などを受診することになります。
契約の位置づけにも違いがある
契約期間が1カ月を超え、金額が5万円を超える脱毛の契約は、エステでも医療機関でも、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」に当たり得ます。エステの脱毛は「いわゆるエステティック」として、医療機関の脱毛は「いわゆる美容医療」として扱われます。特定商取引法の施行規則は、美容医療の対象となる方法として「脱毛 光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法」を定めています。
どちらもクーリング・オフや中途解約のルールが適用されますが、中途解約のときに事業者が請求できる額の上限は同じではありません。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、役務の提供が始まった後に解約する場合の上限(すでに受けた施術の対価を除く部分)は、エステが「2万円又は契約残額の10%に相当する額のいずれか低い額」、美容医療が「5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額」です。契約前に確認しておきたい点は、脱毛の契約前に確認したいことで詳しく整理しています。
受診・相談の目安
脱毛後にやけどのような症状や、長引く赤み・水ぶくれが出た場合、施術を受けた医療機関があればまずそこに相談する方法があります。エステで同様の症状が出た場合や、施術者に医師の資格がないと分かっている場合は、皮膚科を受診して原因を確認することが考えられます。
次に読む悩み
参考にした資料
- 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(医政医発第105号) (厚生労働省 医政局医事課長通知(平成13年11月8日)・確認日: 2026-09-27)
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発第0726005号) (厚生労働省 医政局長通知(平成17年7月26日)・確認日: 2026-09-27)
- なくならない脱毛施術による危害 (独立行政法人国民生活センター・確認日: 2026-09-27)
- 美容医療診療指針 第5章 脱毛治療 (日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・確認日: 2026-09-27)
- 特定継続的役務提供 - 特定商取引法ガイド (消費者庁・確認日: 2026-09-27)
- 特定商取引に関する法律施行規則(第91条 令別表第四の二の項の主務省令で定める方法) (e-Gov法令検索(デジタル庁)・確認日: 2026-09-27)
最終確認日: 2026-09-27